株主・投資家の皆さまへの
ご挨拶
代表取締役
社長執行役員 CEO
樋口 龍
株主の皆さまへ
平素より格別のご高配を賜り厚く御礼申し上げます。
おかげさまで、第12期も無事に終了いたしました。これもひとえに、株主の皆さまの多大なるご支援のおかげと、深く感謝申し上げます。
第12期(2024年10月期)を振り返って
第12期に関しては着実に不動産業界の未来に向かって種まきができてきたと思っております。我々は創業から一貫して、個人のお客様に対する顧客体験の改善と不動産会社に対する業務改善に取り組んできました。
日本には不動産会社が12万社あり、その12万社は①開発、②流通、③投資・運用、④管理、⑤賃貸の5つの領域に分かれています。その中で我々は③投資・運用、④管理、⑤賃貸の領域へSaaSのプロダクトを提供してきました。①開発、②流通の領域にはプロダクトを提供できておりませんでしたが、2024年1月に売買仲介会社(②流通)向けSaaSを手掛けているHousmartがグループ入りしたことにより、売買仲介領域にもSaaSのプロダクトが提供できるまでになりました。その後2024年8月にはデベロッパー(①開発)にプロダクトを提供しているマーキュリーもグループに加わったことで、全ての不動産領域に対してGAグループがプロダクトを提供できる状態にまでなりました。大手財閥系の不動産会社であれば上記5つの領域全てをカバーしていますが、中堅不動産会社ですと5つの領域のいずれかに特化しています。逆に、規模の小さい会社では①の開発以外の4領域全てを担っているケースもあります。
GAグループでは、第12期末時点で、企業規模問わず、全ての不動産会社に5つの領域全てのプロダクトを提供できるようになり、その結果12万社中、約7,400社の不動産会社に弊社サービスを提供する(※1)に至っています。我々が日本の不動産業界全体の生産性向上と発展を担っていると自負しております。
今後さらに多くの不動産会社にプロダクトを提供していくことで、結果的に不動産会社の業務効率化だけではなく、個人のお客様の顧客体験向上に繋がっていくと考えております。なぜなら、不動産会社における紙・FAXでの業務が無くなることで個人のお客様も紙・FAXを使わなくて済むようになるからです。これまで紙・FAXでの対応がメインの業界だったので、顧客データ、成約データ、不動産データの収集もできていませんでした。そこにSaaSを提供していくことは、これらのデータ収集を可能にし、結果的に個人の「買う、売る、貸す、借りる」の意思決定に大きく寄与できると考えております。不動産業界はお客様にとって情報の非対称性が高い不透明な業界だったので、正しいデータの蓄積がなく、データがなければお客様は正しい意思決定ができません。
GAグループは現在、日本国内における年間賃貸申し込み件数約260万申込のうち約100万申込、シェア38%まで申込データを獲得(※2)できるようになりましたし、新築マンション分譲時のデータについても日本のマンション総戸数約700万戸に対し、シェア49%に当たる342万戸のデータを取得(※3)するまでに至っています。まだまだ道半ばですが、テクノロジーの力で、着実に不動産業界を変えられている手応えを感じております。イノベーションを更に加速させていくためには、とにかくテック人財の獲得が最重要です。
テック人財の採用、育成について
昨年の株主の皆様への手紙でも第12期はテクノロジー強化が一丁目一番地とお伝えしましたが、第12期において私の時間の3割はテック人財の採用にかけていました。
グループ全体のテクノロジーのトップが不在でしたので、その採用に命をかけて取り組んでいました。何人ものCTOクラスの方とお会いしましたが、中々見合う方が見つからず、その中でやっとGoogle出身の後藤と出会うことができ、12月2日に常務執行役員CTOに就任いただきました。後藤はGoogleマップにてエンジニアとして初期から開発に取り組み、直近まで責任者をしていた人財です。また、昨年はペアーズというマッチングアプリのAI部門トップを担っていた奥村をCDOをとして招聘し、CPOには楽天トラベルでプロダクトトップを担っていた熊谷、クリエイティブ領域ではau三太郎のCMをはじめとして数々の受賞歴があるトップクリエイターの篠原を迎え、日本の中でもトップクラスのテクノロジー、クリエイティブ体制になったと自負しています。
そして、採用と同時に力を入れた分野が育成です。
一般的に、数多くのベンチャー企業の育成方針は「現場で学ぶ、責任ある仕事を任せてみる」が前提だと思います。我々も現場で学ぶ、責任ある仕事を任せて成長を促す、ということは行ってきましたし、そうすることで実際にメンバーが育っていますので、この育成方針は変わらず続けていきます。しかし、「現場で学ぶ、責任ある仕事を任せてみる」だけでは、現場の上司の能力差、責任ある仕事の提供数にもバラツキが出てしまいます。そのため、第12期では我々はOJTだけではなくOFF-JTの研修にも力を入れてきました。このマネジメント育成の仕組みを弊社ではGALILEO(ガレリオ)と呼んでおり、私も実際に講師としてだけではなく受講者としても参加しています。去年だけでも計55回開催、延べ430人が参加しました。企業経営とは、優秀な人を採用し、その優秀なメンバーが更にレベルアップして活躍してもらえるように学びの場を提供し、育成する、それに尽きると思っています。当然事業戦略も、マーケット選定含めて重要なことですが、会社を永続的にスケールさせていくには、事業戦略の確からしさ、マーケット選定の賢さだけでは、長続きしないと思っています。なぜなら、マーケットは変わり、時代が変わり、事業も変わってしまうからです。しかし、世の中やマーケットが変わっても、優秀な人を採用し、優秀な人をしっかり育成できていれば、時代の変化にも対応できていけると確信しています。
RENOSYについて
RENOSYの事業についても大きく変化をしています。
iDecoやNISAが国民の資産形成の一環として浸透していく中、同じ資産形成手法の1つである不動産投資についてはまだまだ一般に浸透するに至っていません。そのために今回RENOSYのブランドビジョン、ブランドコンセプトを刷新しました。RENOSYが目指している姿は、「不動産による資産形成を、あたりまえにする。」です。ブランドコンセプトは「安心・簡単・最適な、不動産による資産形成サービス」です。「iDeco、NISA、不動産投資」ではなく、「iDeco、NISA、RENOSY」という不動産投資における第一想起を取れるサービスになれると確信しています。社会保障費負担が拡大する中で、国民一人一人が資産形成を行なっていく必要性は増していくばかりです。その観点から、これまでも、商品ラインアップの拡充、買い手、売り手の利便性向上、プロダクトの強化を行ってきました。
そして、3回目の挑戦となるサードパーティー事業の立ち上げを行っています。
不動産投資を当たり前にしていく世界を実現するにはファーストパーティー(自社直販)のみでは限界があります。日本全国、そして世界中どこでも不動産投資を実現させるためには、サードパーティー事業者も間違いなく必要になっていきます。まだまだ立ち上げの最中ですので、これから沢山の課題が出てくると思いますが、RENOSYの現在の認知度50%(※4)、会員数約50万人に拡大(※5)、AI売却登録物件数約3万件(※5)、不動産業界複数領域にまたがる保有データの蓄積量という強みを活かして、そして、今までの失敗を活かしていけば、サードパーティー事業を成功させることができると思っております。
そのために現在徹底的に顧客体験の改善にも注力しています。
私自身も現場に入り、そして、お客様からの要望のみにフォーカスした会議を行い徹底的にお客様に向き合っています。社内ではCustomer Centricity(カスタマーセントリシティ)という部署を作りました。Customer Centricityとは、「お客様の長期的な満足度が、企業の長期的な成長につながる」という概念です。お客様に真摯に向き合った企業が将来必ず選ばれると強く信じています。その結果、フードデリバリーといえばUber、検索エンジンといえばGoogle、ECサイトといえばAmazonと同じように「不動産投資といえばRENOSY」という状態を作ることができると思っています。その状態が作れれば、収益性は格段に上がり、株主価値の向上にも大きく寄与していけると考えております。
米国進出
3月に米国企業RW OpCo社をM&Aをさせていただきました。同社は、米国の不動産投資家をマッチングし、その後ストック収入となるプロパティマネジメントを行う、RENOSYマーケットプレイス事業と同じビジネスモデルを有する会社です。当社は、アジアはタイ、上海に既にオフィスを構えており海外展開は3年前より行ってきましたが、欧米地域進出は今回の米国が初となります。
「なぜこのタイミングだったのか」「リソースが分散してしまうのではないか」「コストがかさむのではないか」とご質問受けますが、なぜこのタイミングだったのか、というと、1年半前から米国の不動産テック企業の調査を開始しており、そのプロセスでタイミングよく今回の企業に出会えたという経緯になります。これまでのM&A同様、今回のM&Aも投資銀行、仲介会社から持ち込まれた案件ではなく、当社の事業戦略で自ら発掘した企業になります。外部から持ち込まれた案件では、自らの戦略に沿っていないにもかかわらず、沿っていると誤解をして案件を進めてしまい、結果的に経営統合後のPMIも上手くいかず失敗する企業が多いと感じています。そのため、基本的には自らの案件発掘にこだわっています。
リソースが分散してしまうのではないか、という懸念についても、国内を中心とした事業戦略という点は変わっておらず、私のリソースの95%は国内事業に充てております。新規立ち上げによる海外参入となると既存人員が分散してしまいますが、M&Aによる海外展開であれば、買収先の既存リソースを活用できるので、その点でも我々として、海外展開はM&Aを今後も活用するという方針です。
コストに関しても大きく赤字を掘って育てていくという考え方ではありません。
昨年の株主の皆様への手紙に創業20年でグローバルにおいて戦える状態にしていきたいと書きましたが、その為にも今米国進出をしておくことが、GA グループの8年後、すなわち創業20年でグローバル展開の土台が作れているかどうかを左右すると思っており、このタイミンングで米国進出を手がけています。小さく素早く試す、を経営のポリシーにしています。イタンジのM&Aも創業5年、上場2ヶ月後に行ったからこそ、M&Aの成功や失敗を早く経験しPDCAを回せたので、その後のM&Aもスムーズに行うことができました。海外展開も同様です。早く試すから、その知見が溜まり成功確率が上がっていくと思っています。繰り返しになりますが、このことから、小さく素早く試す、をポリシーにしています。
イタンジについて
不動産データ企業マーキュリーのM&A、不動産売買仲介SaaSのHousmartのM&Aと事業を拡大していく中で、4年前にリリースしたイタンジBBという業者間サイトが仲介会社や管理会社に広く使われるようになってきました。直近の利用状況のアンケートによればレインズの次に使われており、民間の業者間サイトの中ではトップに躍り出ました。競合他社による業者間サイトは20数年前から存在していますが、我々はそれを4年で超える規模にまで成長しました。リアルタイムな物件情報が掲載されているという利便性を強みに顧客を獲得してきましたが、最近は質だけでなく量でも戦える状態になってきており、掲載物件数も競合他社サイトの60~70%(※6)にまでなっております。今後さらなる利便性向上のために、賃貸物件だけなく、売買物件、成約データ、物件パンフレットといった付加価値のある情報を追加していき、不動産会社にとってなくてはならない業者間サイトの構築をして参ります。
不動産SaaS企業がGAグループに続々とジョインしていただく流れも作れており、2018年11月のイタンジを皮切りに、2022年9月ダンゴネット、2024年1月Housmart、2024年8月マーキュリーと次々グループインしていただいております。
直近M&Aをさせていただいたマーキュリーに至っては、7年前からお声がけさせてもらっていた企業です。
7年前はイタンジがジョインしたばかりでARRもまだ2億円ほど、RENOSYにおいてもマーケットシェア1%程度でした。ただ、その当時から、数年後には不動産のインフラ企業、データカンパニーになる、という姿をイメージできていたので、マーキュリーにお声がけしていました。マーキュリーの陣社長からは「7年前に不動産インフラ企業、データカンパニーのビジョンを語られてもイメージがつかなかった」と言われましたが、今はその未来に向かって確実にGAグループが実績を積み上げてきたという結果を評価していただき、グループ入りしていただけることになりました。売買も賃貸も、イタンジがないと業務ができない日の実現に向けて、これからもプロダクトを磨き続けます。そしてその先に、個人の不動産取引がなめらかになる世界を実現していきたいと思っています。
中期経営計画2026の発表
2024年6月に発表した「中期経営計画2026」では、2026年に売上収益3,230億円、事業利益100億円という目標を掲げました。内訳は、RENOSYマーケットプレイスの売上収益3,137億円(GMV)/CAGR30%、事業利益165億円/CAGR36%、イタンジの売上収益84億円/CAGR38%、事業利益14.6億円/CAGR28%になります。トップラインの成長も再度30%に乗せ、利益率の改善、事業利益も100億円の大台を目指していきます。この先には、GMV1兆円、SaaS/ARR100億円超え、さらにはARR300億円の世界を目指していきます。
志高く、熱量の高い組織に
世の中を変えることができる会社とそうでない会社は、突き詰めると志の高さと圧倒的な熱量の違いだと思っています。志高く圧倒的な熱量を持った組織が世の中を変えています。
米国、中国の急成長スタートアップで働く方々はまさに志高く、圧倒的熱量で、ハードワークをしています。
インターネットがどんなに普及してもマンションの1室、ガレージから始まるスタートアップの形は変わっていません。創業時のタイミングでは大きく成長できたのにその後緩やかな成長しか遂げられていないスタートアップも少なくないと思います。その原因は時とともにファウンダー、役員、メンバーの志が下がり、熱量が下がり、挑戦しなくなり守りに入ってしまうからに他ならないと思います。
脇目も振らず、目の前の世の中を変えることだけにどれだけ向き合えるか。
自分たちがいることで、世の中が前進していると思えるか。
10年後も成長し続けられる会社はほんの一握りです。10年後も成長し続けられる企業かそうではないかは、志高く、熱量を高く持ち続けられるかにかかっています。
ファウンダーとして、創業した日から1日たりとも志も、熱量も下がったことはありません。日頃サポートしていただいている株主の方々の株主価値を最大化できるよう、志高く、熱量高く、必ず世の中を変え、イノベーションを起こし、グローバル企業になります。
樋口 龍
2024年12月(※1)2024年7月時点。当社の合計サービス提供数値について単純積み上げ数値にて簡便的に算出。株式会社マーキュリーリアルテックイノベーターへの公開買付け等の実施について(2024年7月16日公表)P4をご参照(https://ssl4.eir-parts.net/doc/3491/tdnet/2474982/00.pdf)
(※2)対象期間:2023年4月1日~2024年3月31日。日経コンパス不動産仲介の業界概要(https://www.nikkei.com/compass/industry_s/0481)の賃貸仲介取引件数200万件より、ITANDIの申込から契約までのキャンセル率30%を基に入居申込数を285万件と算出し、ITANDIの電子入居申込数から割合を推計
(※3)国土交通省「分譲マンションストック数の推移」より2022年末時点のマンション総数約700万戸におけるGAグループ保有マンションデータ戸数のシェア割合
(※4)2024年10月末時点。調査会社クロス・マーケティング【調査方法:「ブランド浸透度に関する定量調査」(インターネットによる選択式アンケート)/調査対象人数:1000人】)
(※5)2024年10月末時点
(※6)2024年10月末時点。当社調べ
代表取締役 社長執行役員 CEO
樋口 龍 (ひぐち りょう)
1982年東京生まれ。幼い頃より世界的なサッカー選手を目指し、ジェフユナイテッド市原(現J2)に育成選手として所属。24歳の時にサッカー選手としての夢を諦め、ビジネスマンへ転身し不動産会社へ勤務。”巨大なマーケットを形成しながらも極めてアナログな不動産業界にテクノロジーで革命を起こす”と志し、2013年に株式会社GAテクノロジーズを設立し、代表取締役に就任。創業時から中古不動産の流通事業を展開。現在はテクノロジーを活用したエンド・トゥー・エンドの不動産流通プラットフォームの構築を中心に、データドリブンでユーザー利便性の高い不動産取引を目指す。また社内業務においても、AI・RPAによる効率化やデータ活用による業務改善に積極的に取り組む。